経営業務管理責任者要件の緩和について(令和2年10月施行)
このページでは、令和2年(2020年)10月に改正建設業法に対応した建設業法施行規則の改正案における経営業務管理責任者の許可要件の緩和について解説しています。
令和2年5月13日から建設業法施行規則の改正案に対するパブリックコメントが開始されています。
パブリックコメントの意見・情報受付締切日は令和2年6月12日です。(この記事は令和2年6月11日に書いています)
結果については公表され次第確認したいと思っています。
そもそも建設業における経営業務の管理責任者の許可要件というのは厳しすぎるのではないかという意見が多いものでした。
そのような意見をもとに今回の改正が図られているものと思われ、要件緩和に対して、期待をしていた方も多かったのではないかと思います。
昨年(2019年)建設業法の改正案が出された当時は、「経営業務の管理責任者要件が撤廃された」という数多くの反応がネット上で見られましたが、建設業法施行規則の改正案が出されてから、「そんなことはなかった」という意見に変わってきているようです。
実際には、まだ、具体的な運用が示されているわけではないので不明な点はありますが、次のように言えるのではないかと思われます。
経営業務の管理責任者の許可要件は緩和され、今までの基準では、経営業務管理責任者とみなされなかった人が、要件を満足するようになることはあり得ます。
すなわち、経営業務管理責任者の許可要件を満たさなかったために建設業許可を取ることができなかった事業者が許可を取得することができる場合があるといえます。
ただし、許可申請手続き上の煩雑さは、改善されることはない可能性があり、逆に悪化する場合もありえます。
それでは詳しく内容を見ていきましょう。
経営業務管理責任者の許可要件の改正案
国土交通省によると、経営業務管理責任者の許可要件に関する建設業法の改正により事業者全体としての体制が適切なものであるかどうかを判断する、ということになっています。
つまり、経営者個人ではなく、事業者全体の組織としての適切な経営管理責任体制を有しているかどうかを判断するための適切と認められる体制が規定されています。
大枠としては次のような内容です。
建設業許可を取ろうとする会社において、5年以上の財務管理、労務管理、業務管理のいずれか(兼務可)に携わっているものを補佐として配置することで、経営を担う常勤役員に求める経験を緩和する。
ということは、経営業務管理責任者の許可要件は緩和されるが、その代わりに「補佐」するものの要件、及び証明する(疎明する)書類が追加されることになると読めます。
緩和される内容としては次のようになっています。
- 建設業の種類ごとの区分は廃止し、その種類の経験でも認められる。
- 経営業務が、財務管理、労務管理、業務管理のいずれかで良い。
- ただし、上記の場合、一定の経験を有する補佐するものが必要になる。
一番目の区分廃止は結構大きなインパクトではないかと思います。
経営業務の範囲が広がることも大きな緩和だと思われますが、3つ目の「補佐するものが必要」というのは、要件としては重たくはないかもしれませんが、申請手続きにおいては、書類が増えることになると思われ、ありがたいものではありません。
実際に、国土交通省から出されている建設業法施行規則の改正案は次のようなものです。
適切な経営能力を有する者として、下記(イ)または(ロ)のいずれかの体制を有する者であること。
(イ)常勤役員のうち1人が下記(a1)、(a2)または(a3)のいずれかの体制を有する者であること。
(a1)建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する者
(a2)建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位にあるものとして5年以上経営業務を管理した経験を有する者
(a3)建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位にあるものとして6年以上経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者
(ロ)常勤役員等のうち1人が下記の(b1)または(b2)のいずれかに該当するものであって、かつ、当該常勤役員等炉直接補佐するものとして、下記の(c1)、(c2)及び(c3)に該当するものをそれぞれ置くものであること。
(b1)建設業の財務管理、労務管理又は業務運営のいずれかの業務に関し、建設業の役員等の経験二年以上を含む5年以上の建設業の役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位における経験を有する者
(b2)建設業の財務管理、労務管理又は業務運営のいずれかの業務に関し、建設業の役員等の経験二年以上を含む5年以上の役員等の経験を有する者
(c1)許可申請等を行う建設業者等において5年以上の財務管理の経験を有する者
(c2)許可申請等を行う建設業者等において5年以上の労務管理の経験を有する者
(c3)許可申請等を行う建設業者等において5年以上の運営業務の経験を有する者
(a1)(a2)(a3)を読むと、「許可を受けようとする建設業に関し」という文言がなくなっているため、経営業務の管理責任者の経験は、建設業の業種は問われない、ということになります。
(b1)(b2)では、建設業の役員の経験が2年あれば、他の事業の役員の経験と合わせて5年の経験があればよいということになっています。 ただし、その場合は、(c1)(c2)(c3)に規定されている「補佐」が必要になります。現行の個人の経験から、複数の経験に分散され、事業者全体として体制として判断されるということになります。
経営業務管理責任者の許可要件は確かに緩和されていますが、補佐するものの証明等、手続きに必要な書類の収集、作成の手間は増える場合があります。
期待外れ感が否めませんが、実際の運用がどのようなものになるかもう少し待ちましょう。
最後に現行の許可要件を挙げておきます。
現行の経営業務管理責任者の許可要件
建設業許可を受けるための現行の経営業務管理責任者の要件をまとめると次のようになります。
- 許可を受けようとする建設業に関し、5年以上取締役や執行役員(管理者に準ずる地位)としての経験を有する者
- 許可を受けようとする建設業以外の建設業に関し、6年以上取締役及び執行役員等(管理者に準ずる地位)としての経験を有する者
- 許可を受けようとする建設業に関し、6年以上経営業務を補佐した経験を有する者
- その他、国土交通大臣が個別の申請に基づき認めたもの
上記許可要件を満たしていることを証明するための資料としては、次のようなものになります。
個人事業主での経験の場合
- 許可通知書
- 職業欄に経験業種の記載のある所得税の確定申告書
- 経験業種の工事であることが確認できる契約書、注文書
- 2または3が提出できないときは、発注証明書(所定様式)
上記の1~4のいずれか又は組み合わせにより証明します。
1のみの場合は必要期間分が必要です。
2,3又は4、若しくは1から4の組み合わせによる場合は、必要年数5年の場合は直近の1,3,5年のもの、必要年数6年の場合は直近の1,3,5,6年のものが必要です。
法人の常勤役員での経験の場合
- 必要年数分の役員経験が確認できる登記事項証明書
- 次のいずれか又は組み合わせによる
ア.許可通知書
イ.事業種目欄に経験業種の記載のある法人税の確定申告書の写し
ウ.経験業種の工事であることが確認できる契約書、注文書
エ.イ又はウが提出できない場合は、発注証明書(所定様式)
ア.のみの場合は必要年数分必要です。
イ、ウ又はエのみ若しくはア~エの組み合わせによる場合は、必要年数5年の場合は直近の1,3,5年のもの、必要年数6年の場合は1,3,5,6年のものが必要です。
個人の支配人での経験の場合
- 「支配人登記」の登記事項証明書
- (個人事業主の経験に準じる)
支店又は営業所の長での経験の場合
- 建設業法上の営業所の長の経験の場合
ア.建設業許可申請書
イ.建設業法施行令第3条に規定する使用人の一覧表
※必要経験期間の経験が確認できるものであること - 1以外の営業所の長の経験の場合
経験業種の契約締結権限を持つ営業所の長であることが確認できる契約書や注文書
※必要年数5年の場合は直近の1,3,5年のもの、必要年数6年の場合は直近の1,3,5,6年のものが必要です。
準ずる地位にあって執行役員としての経営業務の管理責任者としての経験や補佐経験の場合の確認資料についてはさらにややこしく、各都道府県の許可行政庁によって対応が異なる場合があるため、個 別に窓口でよく確認することが必要です。