経営規模等評価-その他の評価項目(社会性等)(W)の概要と評点アップの考え方
この記事では、経営規模等評価の評価項目の一つである「その他の評価項目(社会性等)(W)」について解説しています。
その他の評価項目(社会性等)(W)の概要
建設業者が社会的な責任を果たしているかを評価する項目が、その他の評価項目(社会性等)(W)です。
総合評定値(P)に占める割合は15%とそれほど大きくありません。
しかし、最高点が1919点、最低点が-1995点と唯一マイナスもあり得る評価項目であるため、仮に減点が大きい場合、総合評定値全体に影響して、点数が下がるということもあり得ます。
その他の評価項目(社会性等)(W)の評価項目は、W1からW9まで9項目に分類されており、それぞれがさらにいくつかに細分化され、全部で19項目もあります。
ここで減点されないように注意しましょう。
その他の評価項目(社会性等)(W)評価項目は次のとおりです。
評点の記号 | 評価項目 | 配点 | |
---|---|---|---|
W1 | 労働福祉の状況 | 雇用保険加入の有無 | 最高0 最低-400 |
健康保険加入の有無 | 最高0 最低-400 | ||
厚生年金保険加入の有無 | 最高0 最低-400 | ||
建設業退職金共済制度加入の有無 | 最高150 最低0 | ||
退職金一時金若しくは企業年金制度導入の有無 | 最高150 最低0 | ||
法定外労働災害補償制度加入の有無 | 最高150 最低0 | ||
W2 | 建設業の営業継続の状況 | 営業年数 | 最高600 最低0 |
民事再生法または会社更生法の適用の有無 | 最高0 最低-600 | ||
W3 | 防災活動への貢献の状況 | 防災協定締結の有無 | 最高200 最低0 |
W4 | 法令順守の状況 | 営業停止処分の有無 | 最高0 最低-300 |
指示処分の有無 | 最高0 最低-150 | ||
W5 | 建設業の経理の状況 | 監査の受審状況 | 最高200 最低0 |
公認会計士等の数 | 最高100 最低0 | ||
W6 | 研究開発の状況 | 研究開発費(2期平均) | 最高250 最低0 |
W7 | 建設機械の保有状況 | 建設機械の所有及びリース台数 | 最高150 最低0 |
W8 | 国際標準化機構が定めた規格による登録の状況 | ISO9001の登録の有無 | 最高50 最低0 |
ISO14001の登録の有無 | 最高50 最低0 | ||
W9 | 若手の技術者および技能労働者の育成及び確保の状況 | 若手技術職員の継続的な育成及び確保の状況 | 最高10 最低0 |
新規若手技術職員の育成および確保の状況 | 最高10 最低0 |
その他の評価項目(社会性等)(W))の評点をアップするための対策
上表のW1から順番に見ていきましょう。
労働福祉の状況(W1)
労働福祉の状況の評価としては、社会保険への未加入は大幅な原点になります。
加入していることが建設業許可の要件にもなっているため、加入しているからといって加点されることはありません。
また、退職金や企業年金制度に加入している場合加点されますので、加入していない場合は、経営状況に応じて加入を検討してもいいかもしれません。
建設業の営業継続の状況(W2)
建設業の営業年数が長いほど点数が上がることになります。
営業年数は、建設業の許可を受けて営業した年数です。
許可を受けていない期間は営業期間に含めることはできません。
個人事業から法人成りしている場合は、個人と法人の営業期間を両方算入できる場合があります。
条件を満たさないと個人事業の営業期間が含まれないことになってしまうため注意が必要です。
また、民事再生法や会社更生法の適用を受けた場合は、大幅な減点になり、更生手続き終結の決定を受けた以降から営業年数をカウントすることになります。
以前の営業年数はカウントできませんので注意が必要です。
会社更生法の適用を受けなければならなくなる前に、経営の専門家に対して定期的に経営診断を受けるなど、恒常的に経営改善、安定経営に努めることが有効であると思われます。
防災活動への貢献の状況(W3)
企業単独で防災協定を締結するのが難しいと思いますので、防災協定を締結している建設業団体に加入することを検討してみましょう。
入会費、年会費が必要になりますが、検討に値すると思われます。
ただし、単に団体に加入すればいいと言う訳ではなく、防災活動に一定の役割を果たしていなければなりません。
法令順守の状況(W4)
法令遵守は当然のことであり、加点はありません。
指示処分や営業停止処分を受けた場合は、減点対象となります。
減点されたくないからといって、処分を受けたにもかかわらず、受けていないと虚偽申請した場合、許可取り消しもあり得ます。
調べればすぐにわかることなので、正直に申告しましょう。
建設業の経理の状況(W5)
次の3つの場合に加点されます。
- 会計監査人の設置
- 会計参与の設置
- 経理責任者による自主監査
会計監査人や会計参与は登記されていることが必要です。
3つ目の経理責任者による自主監査とは、常勤の従業員のうち一定の資格を保有してる者が行うものです。
要求される資格は、公認会計士、会計士補、税理士、建築業経理士試験の1級合格者等です。
公認会計士、会計士補、税理士を雇うことはあまり現実的ではありませんので、建築業経理士試験を受験するよう社内環境を整えていきましょう。
研究開発の状況(W6)
研究開発の状況については、会計監査人設置会社のみが評価対象となります。
大部分の中小建設業者は評価対象にはなりません。
建設機械の保有状況(W7)
建設機械を保有またはリースしている場合は、台数に応じて加点対象となります。
加点されるためには、売買契約書やリース契約書等の証拠書類や、実機の写真、自主点検の実施等が必要です。
建設機械を保有していても契約書が紛失してしまった場合には、せっかく保有していても保有台数に挙げられなくなってしまうので契約書などは大切に保管しておきましょう。
加点対象となる建設機械は次のとおりです。
建設機械の種類 | 条件 |
---|---|
ショベル系掘削機 | ショベル、バックホウ、ドラグライン、クラムシェル、クレーンまたはパイルドライバーのアタッチメントを有するもの |
ブルドーザー | 自重が3トン以上 |
トラクターショベル | バケット容量が0.4立方メートル以上 |
移動式クレーン | つり上げ荷重3トン以上 |
大型ダンプ車 | ①車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上 ②事業の種類として建設業を届出、表示番号の指定を受けているもの ③主として建設業用途に使用するもの (自動車車検証の備考欄に「建」の表示) |
モーターグレーダー | 自重5トン以上 |
国際標準化機構が定めた規格による登録の状況(W8)
ISO9001、ISO14001の規格による登録を受けている場合に加点されます。
一度登録を受ければいいと言う訳ではなく、毎年、継続審査や更新審査があり、大変な負担になると思います。
大切なリソースを割くことができる余裕があれば検討してみてもいいかもしれません。
若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況(W9)
技術職員として申請できる人数のうち35歳未満の人数が15%以上である場合に加点されます。
また、新たに35歳未満も技術者が1%以上増えた場合も加点されます。
若い技術者を確保するためには、労働環境や報酬の改善が必要になるかもしれません。
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