不当に低い請負代金は違法の恐れがあります
建設業界の発展のためには、若い担い手の確保が必要であり、そのためには賃金等の処遇を改善していかなければなりません。
元請け業者と下請け業者の関係において、立場の弱い下請け業者へ様々なしわ寄せが存在すれば、労働者への適切な賃金水準が確保できないことにつながります。
そのことが若い担い手の流出、建設業界の発展を阻害することになりかねません。
したがって、元請業者と下請け業者の関係は法律に基づいた健全な関係でなければなりません。
違法である恐れがある事例
次のような場合は、違法となるおそれがあります。
- 元請業者が、自身の予算額のみを基準として、下請業者と協議することなく、下請業者の見積もり金額を大幅に下回る金額で下請契約を締結した。
- 元請業者が、条件をのまない場合、今後の取引において不利な取り扱をすることを示唆して、下請業者との従来の取引価格を大幅に下回る額で、下請契約を締結した。
- 元請業者が、下請代金の増額要求に応じることなく、下請業者に対し追加工事を施工させた。
- 元請業者が、契約締結後に一方的に代金を減額した。
- 元請業者が、端数処理と称して、一方的に減額して下請契約を締結した。
- 下請業者の見積もりに明示されている法定福利費を無視した金額で下請け契約を締結した。
- 元請業者が下請業者に対して、契約単価を合意なしに一方的に提示し、これにより積算した額で下請け契約を締結した。
違法となる「おそれ」というのは、たとえば、「大幅に」など基準があいまいであるため、争いのよりが生じることになります。
上記のような行為はしない、させないという意識が大切だと思います。
次に法律に、どのように記載され、規定されているか、一応確認してみましょう。
不当に低い請負代金の禁止(建設業法第19条の3)
次のように規定されています。
(不当に低い請負代金の禁止)
第19条の3 注文者は、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはならない。
元請下請け間における下請け契約の場合は、
「注文者」⇒「元請業者」
となります。
そして「不当に低い請負代金」とはどのくらいの金額であるか規定されています。
これが「不当に低い請負金額」です。
この「不当に低い請負金額」として、上記の7つの例を挙げています。
また、「自己の取引上の地位を不当に利用して」というのはどのような状況かというと、
取引上強い地位にある元請業者が、下請け業者を経済的に不当に圧迫するような取引等を強制する、
というようなことをいいます。
元請業者には、下請け業者を選ぶ権限がありますから、それを背景に低い請負金額を要求する、という様な場合です。
元請業者が、下請け業者にとって大口の取引先である場合には、下請け業者に対し、とんでもない不利な要求をしたとしても、下請け業者としては今後の受注などのことを考え、要求を受け入れざるを得ないこともあるかもしれません。
そして、「通常必要と認められる原価」とは、
工事を施工する地域において、その工事を施工するために一般的に必要だと考えられる次の金額の合計額をいます。
- 直接工事費
- 間接工事費(共通仮設費及び現場管理費)
- 一般管理費
より具体的には、
下請け業者の実行予算、再下請先や資材業者等との取引状況、各地域ごとの同種工事の請負金額の実例などにより判断されることになります。
以上、これまで見てきた「不当に低い請負代金の禁止」とされる行為は、当初契約の締結に際してだけではありません。
原価の上昇を伴うような工事内容の変更があった場合にも当然、適用されます。
原価の上昇に見合った下請け代金の増額を行わないことや、一方的に下請け代金を減額することは、「不当に低い請負金額の禁止」に抵触することになります。
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