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著しく短い工期の下請契約は禁止されています

建設業界の発展のためには、若い担い手の確保が必要であり、そのためには賃金等の処遇を改善していかなければなりません。

元請け業者と下請け業者の関係において、立場の弱い下請け業者へ様々なしわ寄せが存在すれば、労働者への適切な賃金水準が確保できないことにつながります。

そのことが若い担い手の流出、建設業界の発展を阻害することになりかねません。

したがって、元請業者と下請け業者の関係は法律に基づいた健全な関係でなければなりません。

この記事では、下請工事の工期に関して、気をつけなけれなばらない、違法となる恐れがある事例を解説しています。
また、下請け業者の立場においても、その内容を知ることは重要であると考えます。

短い工期について違法になるおそれがある事例

下請け工事の工期に関して、次のような場合には、違法となるおそれがありますのでご注意ください。

  • 元請業者が注文者の要求に応じるため、下請け業者に対して、一方的にかなり短い工期で下請け契約を締結した。
  • 下請業者が必要な工期を提示したにもかかわらず、元請業者がそれよりかなり短い工期で下請契約を締結した。
  • 下請業者の原因、責任のない理由により、工期を変更する際、変更後の契約が、通常よりかなり短い工期で下請契約を締結した。

もう少し詳しく内容を確認してみましょう。

適正な工期の確保により、建設業における働き方改革を実現させる

建設業界での就業者の実労働時間は、他の産業の平均時間と比較して長いといわれており、この長時間労働が働き手の確保を難しくしている原因の一つと考えられています。

1日の労働時間が長くなることにつながる短い工期は、労働者の確保という点からも是正していかなければなりません。

また、長時間労働により、事故の発生や手抜き工事につながる恐れもあります。

以上のことから、下請契約において、適切な工期を設定する必要があり、通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする契約を締結することは法律で禁止されています。

「通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間」とは

ここで、「通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間」についてです。

これは、「工期に関する基準」に基づいて判断されることになります。

つまり、単に定量的に期間が短いという見方をするのではなく、「工期に関する基準」という建設工事において適正な工期を確保するための基準として作成された基準に基づいて考えることになります。

具体的な判断については、各下請契約ごとに「工期に関する基準」等を踏まえ、次にあげられる事項を基に判断します。

  • 見積依頼の際に元請業者が下請け業者に示した条件
  • 下請業者が元請業者に提出した見積もり等の内容
  • 締結された下請契約の内容
  • 契約に記された工期が決まった経緯、事情
  • 下請業者が「著しく短い工期」と認識する考え方
  • 元請業者の工期に関する考え方
  • 過去の同種類類似工事の実績

上記に挙げられた事項を基に、次に示す内容を総合的に勘案したうえで、個別に判断されることになります。

  • 締結された契約における工期が、「工期に関する基準」の内容を踏まえておらず、短くなっていることで、下請業者が違法な長時間労働などの不適正な状態で下請け工事を施工することになっていないかどうか。
  • 締結された契約における工期が、過去の同種類似工事と比較して短い場合、それにより、下請業者が違法な長時間労働などの不適正な状態下請け工事を施工することになっていないかどうか。
  • 締結された契約における工期が、下請業者が提示した工期よりも短い場合、それにより、下請業者が違法な長時間労働などの不適正な状態下請け工事を施工することになっていないかどうか。

契約変更時にも「著しく短い工期の禁止」は適用されます

著しく短い工期の禁止は、当初契約のときだけではなく、何らかの理由で工事内容の変更があった場合、工期を変更する契約を締結するときにも適用されます。

なお、工期の変更時には元請下請間で争いになりやすいため、未然防止の観点から、当初契約の締結の際に、工期の変更するときにおいても、通常必要と認められる期間と比較して著しく短い期間としてはならない旨、明記しておくことが重要になってきます。

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